世の中の流れとして働き方改革が推進される中で、大企業を中心にテレワークの導入に向けた動きがもともとありました。そこに新型コロナウィルスの流行拡大という緊急事態が発生して出社自粛への対応が必要になったことで、多くの企業がテレワークの導入を迫られることになりました。その中で、迅速な対応でテレワークを実施した大企業の舞台裏をのぞいてみましょう。
大企業はどう対応したか?
大企業各社の特色を活かした取り組みに注目
感染拡大をうけて日本国内でいち早く移行|GMOインターネットグループ
GMOインターネットグループは、1995年にインターネット事業を創業して以来インターネットインフラ事業を軸に広告・メディア事業や金融事業などのインターネットに関連したサービスを提供していおり、従業員の人数も6000人を超える大企業です。
GMOインターネットグループでは新型コロナウィルスの対策として、2020年1月27日から4000人の従業員を対象にした在宅勤務体制をスタートさせました。日本国内で新型コロナの感染経路不明の患者が初めて確認されたのが2月初頭という点からみても極めて早期に移行した事例です。
ユニークな取り組みは従業員アンケートと結果を活かした制度の見直し
同グループの対応でユニークな点は、在宅勤務実施後に2回にわたって従業員アンケートを行い、そこで得られた従業員の意見を活かした制度の見直しが試みられていることです。在宅勤務に移行して1週間後と1か月後に従業員アンケートを実施して現場の声を吸い上げ、そこで得られた生の意見を活かした対策を打ち出し、さらにそれをグループ全体で共有する体制をとっています。アンケート結果をまとめたものはGMOインターネットグループの新型コロナウイルス対策の特設サイトで公開されていて、テレワークの事例としても企業の情報発信の事例としても参考になるものでした。
実施されたアンケートの結果によると、約9割の従業員が在宅勤務体制を支持、約7割が業務上の支障はあまり感じないと回答しています。このことからテレワークの導入は有意義だったようです。
その一方で、従業員が感じる在宅勤務の課題についても触れています。その中で多いのが作業環境についてです。テレワークではどうしても個人の通信環境に頼らざるをえません。
「自宅の通信環境が弱い」
「システム上の問題で社内のイントラネットにアクセスできない」
「対応するデバイスを持っていない」
などの課題が挙げられました。
もうひとつのポイントは印鑑の完全廃止を実施したこと
もうひとつ同グループの対応がユニークだったのは、在宅勤務実施をきっかけに印鑑の完全廃止を実施したことです。これもアンケートによって確認した問題点を解決するために実施されたものでした。
在宅勤務中にもかかわらず捺印手続きのために出社しなければならない事態が多く確認されたことをうけて、4月17日にグループ内での印鑑手続きの完全廃止を意思決定しています。そして、4月20日にはグループ幹部合同会全体会(グループ全社の社長・役員・事業責任者・部門長などが参加する会議)にて、印鑑の完全廃止方針を徹底することを共有したそうです。
同グループのサイトでは、印鑑手続きの廃止に取り組む企業に役に立つようにと、公的機関などから発信されている情報をまとめたリンク集と、印鑑の完全廃止を意思決定した時の様子も紹介されています。
印鑑に関連する動向も掲載されており、4月21日には[TBS NEWS]で「広がるテレワークでも出社のワケ、“ハンコ文化”が障害に?」、5月14日の[ウォールストリートジャーナル]では「コロナで変わる日本企業、ハンコやめる動きも」など多数のメディアでも報じられ、そこからも脱印鑑の動きが広がっていることが伺えます。
1万人を超える移行を早期に実行|NTTコミュニケーションズ株式会社
NTTコミュニケーションズ株式会社は、世界最大規模の通信事業者のひとつである日本電信電話の長距離・国際通信事業を担う会社でNTTグループの主要企業の一つです。従業員5500人規模の大企業です。
同社は2020年2月17日に1万人を超える大規模なテレワークを実施しました。1月27日に実施したGMOインターネットグループと並び大手日本企業としては極めて早期の対応でした。実施から3ヶ月経った時点で、社員のうち約80%がリモートワークを行っており、グループ会社や派遣社員も含めると1万人以上がリモートで業務を実施しています。
このような1万人を超える規模で早い段階でテレワークへの移行が敢行できたのは何故でしょうか?
ベースにあるのは三位一体の働き方改革
もともと2002年に勤務体系の多様化を目標としてルール(制度・ルール)、ツール(環境・ツール)、カルチャー(風土・意識)の三位一体で働き方改革を推進、2017年以降は特に加速させて進めていました。
「ルール」面では、週2回、月8回までの在宅勤務制度や、コアタイムを10時〜15時とするフレックス勤務の導入、介護・育児を考慮して勤務時間を分割する「分断業務」の実施などにより整備が進められていました。今回の移行に際しては、このうち在宅勤務制度における「週2回、月8回」の上限を撤廃して対応しました。
ライバル関係が切磋琢磨して実現させたITインフラと強固なセキュリティ
「ツール」面では、社内のITインフラの転換が求められました。従来、社員用のモバイルPCには、社内サーバーの利用を前提としたシンクライアント方式を採用していました。 情報セキュリティを重視して選択したものでしたが、通信を前提とするこの方式は海外出張中など通信環境が不安定になると使用できないという難点があり、「社員をお客様と捉えてデザインする」観点に立って社内のIT環境を見直すことになりました。
また2017年の個人情報保護法の改正により情報漏洩に関する規定に変更が加えられたことをきっかけに、社内のITインフラを転換する好機として2つの部門「システム部」と「情報セキュリティ部」を立ち上げます。お互い納得がいくまで意見をぶつけ合いながら、お客様への提供も視野に入れて自らの環境構築を進めました。
こうして2018年に、セキュリティレベルは維持しながらクラウドを活用したITインフラを新たに構築し、自社で運用する「オンプレミス方式」と並行運用することになりました。 社員用PCも、高い利便性と複合的なセキュリティ機能を兼備したセキュアドPCを富士通株式会社と共同開発しました。
現在では、グループ会社も含め17,000台あまりを展開済みだといいます。ITツールとしては Microsoft社のコミュニケーションツール「Microsoft Teams」や各種SaaS(Software as a Service)の社外での利用環境も整えました。
経営陣が率先して向き合って生まれた縦横の関係
「カルチャー」面の変革は一番難しいもので、エンジニアはリモートワークにすぐにシフトできても、サービス企画や人事のようなスタッフは、プロジェクトの良し悪しや合理性をすり合わせる必要があり、仕事の仕方を変えづらかったと言いいます。
2018年7月には、東京五輪・パラリンピックを見据えた政府主導の「テレワーク・デイズ」が実施され、同社でも6,350名の社員が参加しています。テレワークに関する課題の共有にはなりましたが、その段階ではあくまでも通常の業務を補う選択肢に過ぎなかったようです。
なかなか進まなかったカルチャー改革は、現場の社員と真摯に向き合うことで少しずつ進み始めます。社内でシステム環境やセキュリティポリシーに関する疑問や改善要望を社員から受けつけオンラインで議論の場を設けたところ、それまでシステム部のヘルプデスクに集中していた問い合わせや相談が、社員間で自律的に問題提起されて解決が行われるようになりました。加えて、コミュニケーションツールに関心のある社員に向けたMicrosoft Teamsの講習会を頻繁に実施することで、受講者が所属部署に戻りノウハウを共有し、活用の啓蒙を行うことで利用率が向上しました。このように、何かあればシステム部に相談するという従来の縦の関係に加えて、部署を超えて互いに教え合ったり、アイデアを出し合ったりする横の関係性が生まれました。
経営層も積極的に関わったことも大きかったようです。庄司哲也社長をはじめ、経営層が働き方に関するメッセージを定期的に発信したり、Microsoft Teamsを用いたコミュニケーションを積極的に行ったりしました。新型コロナウイルスの影響もあり、取締役会をはじめとした重要な幹部会議もすべてリモートで行っており、経営幹部の方が多くの社員よりも先んじてコミュニケーションツールに慣れていたため、社長をはじめ経営幹部が社員に使用法を伝授する光景も見られたといいます。 “鶴の一声”ではなく、トップ自らが1人のユーザーとなってリテラシーを身につけ、現場から吸い上げたアイデアを管理部門で議論し再び現場に落とし込む、そうした過程で縦だけでなく横にも展開されていきました。
経営のリスク回避のための働き方改革でコロナ危機も乗り切る
同社でも、外資系IT企業への人財の流出が目立ちはじめ、子育てや介護と業務の両立に関する声も多く上がっていました。日本型の大企業として雇用や所得を安定させているだけでは不十分で、働き方の多様化に対応できていないことが経営上の大きなリスクとなっていて、会社にとって最適な方法について考え、取り組んでいた折に発生したのが今回のコロナ危機でした。社会全体が突然の対応を迫られる中で、個々の社員と経営サイドが危機感を共有したことで、一斉に全社的なテレワークに舵を切ることができたのです。それは、長期的な目線で着実に社内の改革を重ねてきたからこそ、実現できたのだといいます。
リモートワークに移行して2ヶ月が経過したところで管理部門のリーダーたちに実感を尋ねると、
「多少疲労感はあるが、うまくいっている」
「生産性や業務のパフォーマンスは維持している」
「チャット、資料共有、音声会話が同時に走るなど、こなれてきた」
といった答えが返ってきたそうです。着実にテレワークが浸透していることが伺えます。
製造業でテレワークを実現|カルビー株式会社
テレワークを導入して成功している大企業の一つが、老舗の菓子・食品メーカーのカルビー株式会社です。創業は1949年で、70年近く菓子・食品業界をリードしてきた同社の歴史や実績からすると昔ながらの堅実な企業のイメージがありますが、2009年にそれまでの同族経営を脱して、オフィスや働き方の改革など本格的な経営革新が始まっていました。
テレワークの活用が難しいとされる製造業において、テレワークやオフィスのフリーアドレス化をいち早く導入した同社は、どのようにして実現させ業績拡大までつなげられたのでしょうか。
成功のカギは経営陣の率先した取組みと社員の考え方と隔たりがないこと
一番大きな成功の理由は、トップや管理職が率先してテレワーク導入に取組んでいること、そしてトップと社員の間に考え方の隔たりがないことだと言えるようです。トップが社員に対して制度の意味合いやその先にある目的を繰り返し説明することで社員にも理解されて浸透していきました。
2007年に本社の一部の部門にフリーアドレスを導入、IT環境が整備されてペーパーレス化が進みます。2010年には本社オフィスの移転を機に本社の全部門にフリーアドレスを導入、上司・部下が目の前にいない働き方が定着します。
2011年には営業職の直行直帰のスタイルが定着しモバイルワークも浸透します。働き方変革のためのプロジェクトを結成して試行錯誤を続け、2013年夏に本社・東京支店で在宅勤務のテスト導入を実施。こうした取り組みの成果が高く評価され、2014年4月に全社的な在宅勤務を正式に導入することになりました。
その際、従業員への周知と啓発を行い、在宅勤務のルールを簡素で使いやすいものにまとめたり、人事・労務管理のルールや業務の評価基準なども定めています。さらに上司自らが積極的に在宅勤務をすることにより部下の在宅勤務を促し、2015年7月には本社管理職に対して積極的に在宅勤務を推奨し、従来は週2日までとしていた在宅勤務を3日以上も可能として働き方変革を推進しました。
試行錯誤して取り組んだ働き方改革が社内に浸透した
こうして業務プロセス、組織風土の改善を進めた結果、
「すでにフリーアドレスが定着してIT機器が充分に貸与されており、ペーパーレス化、情報の電子化も進んでいるため、オフィス勤務にこだわらない働き方が浸透している。」
「部下や上司が目の前にいない働き方も定着している。各自のスケジュールもオープンにし、パソコン上でスケジュールが確認できるようになっている。また、上司が積極的に在宅勤務を行い、テレワークを実施しやすい雰囲気を作り出している。」
として社内でも評価されています。
こうして同社では、2017年にオフィスで働く社員のテレワークを認める「モバイルワーク制度」を導入し、2020年に入り新型コロナウイルスの感染拡大後もこの制度を続けていました。
そうした中、同社は6月25日に新たな働き方「Calbee New Workstyle」を7月1日から導入すると発表しました。
その新しい働き方とは原則テレワーク勤務とし、対象は本社や営業拠点のオフィスで働く従業員で、WEB会議や契約書の電子押印などを活用して出社率を3割程度に抑えるというものです。全従業員が約3700人で、そのうち約800人(約2割)が対象となります。対象外となるのは工場勤務者が中心です。
導入に伴い、通勤定期券代の支給が廃止され、代わりに出社日数に応じた交通費の支給に変更されました。さらに「モバイルワーク手当」を新設してテレワーク環境を整備する費用が一部補助されるようになりました。また、単身赴任をしている従業員について、テレワークでも業務に支障がないと判断された場合には単身赴任を解除して家族と同居できるようになりました。
テレワークのメリットが明らかになり社員の意識も変化
こうした新しい働き方を導入する背景には、テレワークによるメリットが明確に表れていることと社内の意識が変化したことにあるようです。5月にオフィスで働く従業員を対象に実施したアンケートでは、6割を超える従業員から感染拡大前の働き方を変えたいという意見があり、社内の意識にも変化があったことがうかがえます。
テレワークによるメリットで明確に表れているのは、
「社員の通勤時間の削減」
「新しいコミュニケーションスタイルの浸透(=各種WEB会議システムの活用)」
「ITによる業務効率化(=契約書の電子捺印や名刺の電子管理化等)」
などが挙げられています。
実施された社内アンケートからうかがえる従業員の意識の変化とはどうようなものでしょうか。
『モバイルワーク制度で実感していたメリット』について、
「通勤時間がないこと」
が最も多く、
「会議室が無くてもミーティングが可能」
「集中力の向上」
の順に多かったようです。
『モバイルワークの想定外の良かったこと・発見』について、
「遠慮しながら退社する必要がない」
「会社に同じ時間に毎日行く必要性を感じなくなった」
「これまでの仕事のムダに気付いた」
「過剰すぎる業務の側面を感じた」
「行かなくてもいい出張がある」
「仕事を朝早くできることで家族との時間が増えた」
「生活リズムが改善、睡眠時間が増えた」
といった回答があったといいます。
このことより、出社しなくても業務ができることが確認され、従業員の各個人の事情に合わせたスタイルで仕事ができるためプライベート面で充実したり、業務のムダな部分が把握されて省くことにより効率化が図れることなどもわかりました。こうしてテレワークに対する従業員の意識が変わることで会社側も新しい働き方を導入するに至ったようです。
快適な在宅勤務環境づくりに注力している会社|クックパッド株式会社
レシピサイトを運営するクックパッドは、2020年2月18日より10日間の在宅勤務を実施、その後期間を延長するなどの対応をとりました。全従業員に対して在宅勤務を指示し、やむを得ず出社する場合は上長の許可が必要としました。さらに、社内外の会議はもちろん採用面接も全てビデオ会議で実施するという徹底した体制をとっています。
インターネットでの作業環境を普段から整えていたことでスムーズに導入
クックパッドでは、業務にインターネットからアクセスできる各種クラウドサービスを多く利用しています。社内ツールもそのほとんどがインターネットからアクセスできるようになっています。具体的には、コミュニケーションツールとしてSlack(チャットサービス)やZOOM(WEB会議サービス)、人事・会計業務ではWorkday(人事・総務系クラウドサービス)などを利用しています。これらのツールはもともと、場所や時間、雇用形態などに関係なく、ほぼ全ての従業員が利用できます。こうした作業環境を日ごろから整えていたことでテレワークをスムーズに導入できたと考えられます。
他に日常的に使われているツールは、以下のサービスがあります。
オフィススイート: G Suite
コラボレーション: GitHub.com, GitHub Enterprise
Wiki, ドキュメンテーション: Groupad (内製ツール)
ワークフロー: ServiceNow
さらに、今回の在宅勤務指示に際して自宅にインターネット環境を持たない従業員に対しては、モバイルルーターやテザリング可能な携帯電話の貸出も行うなど、社外でも支障なく仕事ができるような配慮もされています。
在宅勤務に対する細やかな対応と環境作り
在宅勤務を原則化するにあたり、オフィスとなる全従業員の自宅についてどういった環境があるかがわからなければ方針を決めることも難しいため、同社では全従業員を対象としたアンケートを Google Forms を使ってヒアリングしました。
- 自宅に安定して接続できるインターネット環境はあるか
- 遠隔会議のために利用しているマイクはあるか
- その他、会社からの支援が必要な項目
こうして在宅勤務開始にあたってサポートする側として過不足を失くすため、従業員の状況を把握して効果的な対応ができるよう準備を行いました。
その他、インターネット環境やVPNの利用、Zoomを使った遠隔会議についてもセキュリティや操作面についても考慮した対応をとっています。セキュリティに関してはログ収集と監視を設計上で重要事項とするなど、しっかりと対応しています。
さらに1人で黙々と作業する中で寂しさや不安を感じる社員のために、入退室自由な雑談部屋をZoom内に設けたり、健康のためにZoomを介して一斉にラジオ体操をする部署も出てくるなど、テレワークでも働きやすい環境作りを考案しています。
テレワーク先進企業|サイボウズ
サイボウズは1997年創設のグループウェアの開発・販売・運用を手掛ける企業です。従業員は連結を含めて約1800人です。
同社は10年以上前の2010年8月から在宅勤務・テレワーク制度段階的に導入してきました。その後も、検討を重ねながらテレワーク制度の洗練を進めています。
テレワークの試験導入と評価を経て環境と制度の整備が進む
2010年8月から2011年3月にかけては試験導入期にあたります。「上長の承認を得れば、月4回まで在宅勤務できる」というルールを3ヶ月間、全社員を対象に試験導入します。その際、
「成果の判断」
「勤務時間や働き方の管理」
「コミュニケーションコストの増加」
「情報漏洩のリスク」
「モラルの低下」
など、業務効率の低下が懸念として上がりました。そのため、これらを可能な限り低下させないように配慮して行われました。
延べ19人が在宅勤務を行ったタイミングで中間評価を行いました。
「一部の業務に制限は出たものの、成果物の品質は総じて低下していない」
ものの、
「相手の状況がすぐに分からないためにお互いがストレスを感じるケースがある」
という結果から、WEBカメラの貸出やスケジュールの共有方法の統一を進める等が課題として挙がります。
当時は「在宅勤務を終了後、勤務時間と業務内容を報告する」というルールを実施していました。
しかし、
「結果報告が分かりやすい資料作成しかできないのではないか」
「結果が目に見えにくい”考える仕事”はあまり在宅勤務に向いてないのではないか」
と、窮屈さを感じる社員もいました。こうした環境・制度の検討もしつつ、試験導入の延長が決まります。
東日本大震災がきっかけで在宅勤務制度が本格始動
2011年3月に東日本大震災が発生、交通機関の混乱や原発事故により、出社に不安を感じる社員が続出しました。そこで、東京オフィスでは在宅勤務の一時原則化を決定します。
この頃、経理部では決算に向けた業務が行われていました。「在宅勤務では難しい業務」と経理部のメンバーも考えていましたが、必要なシステムに自宅から安全に接続して作業できるよう情報システム部が主導で対策を行い、予定通りの適時開示を行うことができました。こうして在宅勤務制度の本運用が定着し始めることになります。
その後も、長期的に生産性を維持向上できる働き方の検討を進め、働きたい時間と場所を9分類の中から選ぶ「選択型人事制度」が始まります。2012年8月には、ふだん在宅勤務をする働き方ではない人も、上司に申し出れば突発的な在宅勤務ができる「ウルトラワーク制度」を試験的に導入し、本運用に向けての検討を始めます。
社内からも広く意見を募ったところ、「制度を上手く活用して生産性を上げられた」という前向きな声も挙がりました。しかし、「制度を使っている人が、本当に仕事をしているか分かりにくくてモヤモヤする」という不安な声もあり、これらの意見も踏まえて、アップデートを重ねていきました。
さらなる生産性向上を検討した結果、「働く場所・時間を一時変更する場合は、前日18時までに」としていたウルトラワーク制度のルールを変更。子どもの熱などで当日突発的にテレワークをするケースが増えたため、当日の申請を可能としました。これで、在宅勤務を始めとした一時的な働く場所の変更は、上長・チームでコミュニケーションをした上であれば、ほぼ自由となりました。
働き方の多様化で限界になり「働き方宣言制度」を開始
2018年4月、働き方が多様になり9分類から選ぶ制度では限界が出てきたため、100人100通りの働き方を宣言する「働き方宣言制度」が始まります。
「午前中は常に在宅勤務をします」
「水曜日は在宅勤務をします」
といった希望の働き方を社員に宣言してもらい、それ以外に突発的にテレワークをする場合は上長に承認してもらう形で現在は在宅勤務制度を運用しています。
同社のサイトでは、快適・安全なテレワークを実現するための主なポイントが紹介されています。
オンラインのオフィス環境を整える
- グループウェア
- チャット
- WEB会議システム
情報はすべてオンライン上で見えるようにする
セキュリティ対策をする
- パスワードポリシー
- スクリーンロック
- ディスク暗号化
- 2段階認証(PC)
- リモートワイプ(スマホ)
テレワーク用のガイドラインを作成・周知する
- 端末を放置しない
- 覗き見フィルターの活用
- 端末の又貸しの禁止
- 安全は回線を使う
心理的安全性を確保する
- 「一部の人だけOK」にすると普及しづらい
- 監視が強いと「そこまでしてテレワークしたくない」となる
中小企業の利点を活かしてテレワークを!
大企業のテレワーク導入事例をみると、どの企業も簡単に導入できたわけではなく、組織や制度の問題など、大企業ならではの難しさがうかがえます。それでも、各社ともそれぞれの課題を克服して、技術力や各社の特色を活かしながら、さらに先に進んだスタイルでテレワークを実施していることがわかります。
そうした大企業にとっては課題となりうる組織や制度ですが、中小企業にとっては逆に利点になると言えます。大企業とくらべてコンパクトな中小企業は経営陣と従業員との距離が近いため、相互に意思疎通が図りやすく会社の意向も伝えやすいこと、制度の変更にも比較的に柔軟に対応できることから、中小企業こそ、その利点を活かしてテレワーク実施の恩恵を受けるべきかもしれません。
中小企業のコンパクトさを活かしてテレワーク導入を実現!
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